−十勝を制して、更に続く富士も優勝、いよいよタイトルに王手で岡山ですが。
山田監督 :
実は富士もセーフティカーが長く入っていなければ勝てていなかったでしょう。セーフティカーランの間に作戦を変更したのですが、その時ステアリングを握っていた中谷明彦選手に「燃費をセーブしつつ、どこまで引っ張れるかやってほしい」と指示して、それを中谷選手がキッチリ実践してくれた結果が優勝につながりました。
もし、あと2〜3周多ければ、燃料補給の必要性が生じてトップを譲っていたと思います。
そして岡山ですが、これも大変なレースでした。
今年から500kmに決勝が伸びたのですが、400kmを走った時点でデフとABSにトラブルが生じたのです。状況を極端に言えば「デフの入っていないFF(前輪駆動)車」という状態で、終盤チェッカーまで走りきりました。
この時の操縦安定性は酷いものでしたが、ドライブしている木下隆之選手には毎ラップ、後続車両のタイムを伝えていました。
後続のタイムに限りなく近いラップを重ねてもらい、周囲には自分たちがマージンをキープしてペースコントロールしているかのように見せたのです。
もっとも、やっている方としては「いっぱい、いっぱい」の状態でしたが(笑)。
−結果的に五連勝を飾って、タイトル獲得一番乗りとなりました。
山田監督 :
それは気持ちよかったですねぇ。
でも、本当にキツいレースばかりが続きますよね(笑)。先程も言ったように、十勝24時間は体力的には辛かったけれど、セダンは全く壊れる気配も無くて、精神的には余裕がありましたね。
−残すところ、あと2戦となりましたが。
山田監督 :
最終戦までセダンとワゴンの2台体制で行くことになりました。
セダンは全勝を狙いたいし、ワゴンには初優勝をさせたいし。2台がもし競り合うようなことになったら・・・。
その時はチームオーダーは出しません。
どちらにも勝たせたいけれど、勝つなら実力で優勝してほしいですしね。
−市販車のランサーエボリューションは"]"に進化しましたが。
山田監督 :
まだ構想の段階ですが、2008年はエボリューション]でレースをやりたいと思っています。
エボリューション\と比べて車両重量が増えてボディも大きくなった「]」ですが、私はサーキット向きのクルマだと思います。
ボディが大きくなったといっても、トレッドが拡大されたことは大きなメリット。聞くところでは前後重量比も良くて、フロントヘビー気味の「\」よりもバランスが良い気がします。
−重量増は致命的なデメリットにはならない?
山田監督 :
現在のセダンとワゴンを比べると、ワゴンの方が60kg重たいんですよ。でも、その重さはボディの後半部に寄っているために、結果として前後バランスがとても良いのです。
一例を挙げると、岡山の予選ではワゴンに燃料系のトラブルが生じてしまい、止むなく通常の予選の3倍近い60リットルの燃料を積んでアタックしました。
セダンに比べると元々の車両重量に加えて、多く積んだ燃料分も合わせると90kg以上重たいことになるのですが、マークしたベストタイムはセダンの僅かコンマ1秒落ち。
そんなこともあって、クルマというのは操縦安定性が高ければ、多少の重量増はデメリットにはならないのかな、と思っています。
−「]」は電子制御も相当進化しているようですが。
山田監督 :
そこも「]」に期待するところです。
電子制御はレース中に細かくモードを変えて使うようなことはないのですが、その気になれば"使える"というのはメリットです。
2003年でしたか、あるレースの決勝で後半になってリアタイヤの摩耗が限界に達したことがありました。
その時、ACDをスノーモードに切り換えて走るようにドライバーに指示したのです。ACDのスノーモードは雪道でのスリップを検出して走行安定性を高める方向に補正してコントロールしてくれる制御プログラムなのですが、タイヤが摩耗して滑ることに対してクルマが挙動を補正してくれたのです。
純正装備されているシステムですからレースの規則上も使うことに問題はありませんし、ドライバーもタイヤも絶対的に楽になりますよね。
もっとも、「]」のS-AWCはレースにおいては多少の初期トラブルもあるかもしれません。しかし仕上がっていけば、とても速いクルマになりそうな気がしています。
−最後にファンの皆さんにメッセージを。
山田監督 :
CT9A型ランサー最後の年となった2007年に強さを見せてシリーズチャンピオンを獲得出来たのも、多くのラン・エボファンから頂いたご声援のおかげです。
残り二戦も全力で戦いますので、引き続き応援よろしくお願いします!